中村天風氏略歴
明治9年東京にて出生。福岡で育ち、16歳の時に満州で帝国陸軍の諜報員となる。日露戦争後、進行の早い結核に罹り、治療の方法を求めて、アメリカへと渡る。その後ヨーロッパへと渡り、様々な専門家・著名人に会うが、納得する答えは得られなかった。失意のうちに日本へ帰る途中、インドヨーガの聖者、カリアッパ師に出会う。2年半の修行ののち、結核は治癒し、悟りを得る。
帰国後、様々な要職を歴任したのち、大正8年「統一哲医学会」を創設。政財界の要人も多く入会した。昭和15年に「天風会」に改称(現・公益財団法人「天風会」)。昭和43年、92歳で死去。
『運命を拓く 天風瞑想録』
1)心の置きどころ次第で、運命は拓ける
運命のうち、どうすることもできないのが「天命」、人間の力で打ち開いていけるのが「宿命」。
心を積極的にし、心に感謝と歓喜の感情を持たせることで、宿命を統制できる。乗り越えていける。
心を積極的にするとは、心を清く、尊く、強く、正しく、持つこと。
消極的に物事を考えないこと。病になっても、不運になっても、感謝すること。
2)マイナス思考は体に悪影響を与える
言葉は人生を左右する力のある哲学である。
結論が”積極的断定”で終わるように常に気をつける。
例)「暑いなぁ、やりきれないなぁ」→「暑いなぁ、余計元気が出るなぁ」
やり損なったら、取り消す。(「と、昔はいったけれど」)
3)心配すると運命はますます悪くなる
人生を完全に活きるためには、何事もやたらに悲観したり心配しするのをやめること。
なぜ悲観するのか。それは勇気の出し方が分からないから。
”勇気”が人生を統一する一切の根本基礎である。
4)誰もが無限の可能性を持っている
自然を作ったのは宇宙霊である。宇宙霊とは大自然のエネルギーであり、その本質は、創造・進化・向上し続けること、である。大自然のエネルギーから生まれた私たちも同じ、自分は力の結晶だ、と思うことで、運命は拓ける。
5)理想は心に具体的に描くことで実現する
理想を常に現実のものと同じように自分の心に明瞭に描くこと。
6)人生を幸福にするには信念が必要
運命や健康を完全にして、人生の真の幸福を獲得しようとするなら、いったん描いた理想は固く把持して変更しないこと。
心身統一法
感情のコントロールができるようになるための心と体の訓練法。わだかまりをなくし、執着しないように心がける。
1)連想暗示法
就寝前に楽しいこと、嬉しいことを考える。実在意識が潜在意識に入り込みやすくなる時を利用する。
2)命令暗示法
寝際に自分の願いを自分に命令する。鏡に映る自分の眉間に向かって、「お前は意志の強い人間になる」と言う。
3)断定暗示法
朝起きた時に、昨夜の願いが叶った、と断定する。「命令暗示法」とセット。「私は意志の強い人間になった!」と声に出す。
積極思考に必要な日常生活の心がけ
1)内省検討
常に自分の心の状態を客観的に観察し、消極的な思考を追い出す。
2)暗示の分析
悲しいニュースなどに影響されるので、消極的なものを取り入れない。
3)交人態度
自分も相手に影響を与える存在であるから、相手に消極的な暗示を与えない。
4)取越苦労厳禁
未来を思い悩むことなく、過去の失敗を糧として、未来に建設的な計画を思い描くこと。
5)正義の実行
本心、良心に従って生きる。
クンバハカ
ストレスの身体への影響を最小限に抑える体勢。ミスをしたと思った瞬間に「肛門を締める」「肩の力を抜く」「下腹に力を込める」
安定打坐(あんじょうだざ)
日常の、雑念が浮かぶ「多念多心」の状態で楽に座り、ブザーを断続的に鳴らし、その音に集中することで「一念一心」へ導き、突然音を止めて「無念無心」へと導く瞑想法。
参考文献
『運命を拓く 天風瞑想録』中村天風
『まんがでわかる中村天風の教えー人生は心一つの置きどころ』
『中村天風の生きる手本』宇野千代・中村天風述
第3回 幕賓研究会でのフィードバック
議題1
陽明学では「良心」を出発点とするが、「日常の心がけ」の5つの項目のうち、「正義の実行」が一番最後に来ているのはなぜだと思うか
→ 天風は、まず消極的な心持ちをなくし、心を整えて初めて良心が発揮できる、と考えて、この順番にしたのではないか。
議題2
天風は運命を天命と宿命に分け、天命を「この両親から生まれてきたこと」など、変えることのできないもの、としているが、私はそれが宿命に当たると思っている。見解はどうか。
→ 幕賓研究会では、宿命を変えられないもの、運命を変えることができるものと定義。
議題3
開運五条件
一命、二運、三風水、四積陰徳、五読書
→ 一命とは生まれた日に宿る命。宿命。二運とは運勢、運命の流れ、時の流れにうまく乗ること。三風水とは、身の回りを整えること。四積陰徳とは陰で徳を積むこと、こっそり良いことをすること。五読書とは、勉強すること。