Sさん〈幕賓と側近や君主の違い〉
p.303にある「浪人的風懐」という箇所が、幕賓や側近、君主との違いを明確に分ける要素だと感じています。
ひとところに止まるのではなく、常に放浪していたり、留まることなく、見聞を広げ深めていく生き方そのものが、幕賓の要素に欠かせないものなのではないでしょうか。
三国志で有名な諸葛亮孔明も、20代後半まで誰に使えることもなく、晴耕雨読の暮らしをしながら、自然や自分自身と対話をするような生き方をしていたこともこれに該当すると思います。
Rさん〈側近として君主を支えるということ〉
読んでみて、すごくいいと思ったところは、p.302の、知識に志を足したものが見識で、見識に決断力を足したものが胆識であるという箇所です。
やはり決断はとても大切だと感じたのと同時に、私自身は、書籍の中に出てくる側近的役割を生きていたことを確認しました。
側近として君主を支える中で、色々な経験をしてきたので、勉強と自分自身の経験を交えて学びを深めていきたいと思います。
自分が側近として君主に直言をした際、君主はきちんとそれを聞いてくれて、その点ではすごく良くなりました。
ですが、君主自身が持っている課題の根本解決には至らず、自分が組織を離れた後、その組織は崩壊してしまいました。
この経験から、君主はどのような側近を持つかが非常に大切だということが分かりました。君主の弱さや、人間的な部分が出るところを理解し、側で支えるためには、胆識が必要だというのは側近も幕賓も変わらないと思いました。
また、君主一人ですべてができるわけではないので、周りの人間がどのように君主に接し、君主を本物の人物にしていくかも大切だと改めて思います。
また、深い問題であるほど、普段一緒に過ごし、その問題の渦中にいる人たちがいくら伝えても伝わらないこともあるので、このような時ほど、なんの利害関係もなく、客観的にアドバイスをくれる幕賓の存在が重要だと感じます。
吉武大輔 補足情報〈君主の色ごと〉
君主の色ごと(女性問題)というのは、君主の性エネルギーと比例しています。性エネルギーとは、セクシャルな意味だけでなく、何かを創り出したいという創造の力です。
起業したい、事業を成功させたいというエネルギーと、女性を抱きたい、支配したいというエネルギーはつながっているため、起業家や経営者にの周りは色ごとの問題が少なくありません。
それらのエネルギーを昇華するために、多くの経営者は、フルマラソン、トライアスロン、サーフィンなど体を動かして、エネルギーを発散することによってバランスを取っています。
この性エネルギーをうまく事業に活用できる人とできない人(女性を求めてしまう)の違いは、幼少期の母親からの愛情を目一杯受け取ることができたかが関係しています。
君主のエネルギーや意欲を目指す方向へと導いていくのも、幕賓の役割の一つだと言えます。
Mさん〈幕賓とビジネスパートナー〉
私は皆さんの話を聞いていて、幕賓を求めていたことに気づきました。
現在、自営業ですが、一人で事業を進めていくことに限界を感じていて、ビジネスパートナーを求めながらも、具体的にどのようなパートナーだと良いのか分からずに悶々としていました。
その中で、p.18の「企業において自分が居なくても回っていくようにすることである。いわば、己を無にすることから始めなければならない」という箇所を読んではっとしました。
仕事を私利私欲のためにすると失敗する。全体の幸せを願い、そのために自分のやるべき仕事や自分の役割を全うするという気持ちでいれば、自ずと正しい振る舞いや判断が出来るようになると思います。
よき幕賓と出会うためには、私自身がよきリーダー、経営者であることが大切だと思います。実際、今働いてくれている従業員も、私のビジョンや想いに共感して、働いてくれています。
ですが、開業して1年経った今も社員教育やフォロー、HPの改善などができずにいるので、今後の店舗展開も含めて、改めて取り組んでいきたいと思います。
吉武大輔 補足情報〈リーダー3つの所以〉
Mさんに今必要なのは、ビジョンだと思います。どんな未来や会社を作ろうとしているのか。それが曖昧なままだと、どんな方向に進んでいけばよいのかを組織のメンバーもわからないまま、組織を運営しなければいけなくなります。
リーダーがリーダーたる所以は3つあると考えています。
一つは、ビジョンを持っていること。ビジョンを持っていない人で仕事が出来る人は、マネージャーです。
二つ目が、基準を提示することです。組織全体で目指す基準を設定し、後は周りが行うという状態を作ることができれば、リーダーはビジョンの明確化と具現化に集中することができます。
リーダーがビジョンも持てず、かつ基準を設定しても周囲がその基準に到達することができなければ、組織は内部崩壊していきます。
そして三つ目が、p.18の「退いて後継者を得ること」です。これは、今の日本が出来ていないことだと感じています。
国会を見れば分かりやすく、70歳80歳でも現役で活動している人が多いのですが、人が肉体的にも精神的にもパフォーマンスを発揮できるのは、50-60代前後だと考えています。
60代になれば、自分の叡智や志を後継者に引き渡していかなければならないのに、70代、80代でも現場に残っているという事は、自分よりも優秀な後継者を育てることができていない、ということです。
本当の師というのは、自分を超えていく存在を育てることができる人間であり、自分のコピーや劣化番人材しか育てることができないのであれば、まだ自分が未熟であることを自覚する必要があります。
そして、リーダーがそのような人材を育てるときに必要なのが、原理原則を教えてくれる師であり、幕賓です。
Mさん
昨年まで、自分が納得するような直言をしてくれる側近がおらず、全て自分が指示をしなければならない状態だったが、今年に優秀な人材がプロジェクトチームに入ってきてくれた。
そのメンバーは自分が指示をしなくても、率先して動いてくれるため、非常に仕事がしやすくなり、p.242にある「社長、貴方がいなければ会社が持ちません。と言っている人がいたら大馬鹿者である。貴方がいようがいまいが私やります。貴方が辞めても私やっていきます。と言える人が必要である。」という基準もクリアしています。
今までそのような人材と出会えなかったり、育てることができなかったのは、自分のビジョンが曖昧であったり、実力不足だったことに気づき、現在は自己価値を高く保ちながら、自分自身を客観的に見据える冷静さが必要だと自覚しています。
また、p.244に「荘王は放蕩を装いながらも、人物の時機を待っていたのである。」とあるように、強い意志を持ったリーダーが、自分を変えるには時間がかかります。なので、幕賓は常に一緒に居るのではなく、1年たってどうか、2年たってどうか、と長期的な視座から、一生涯そのリーダーを信じ続け、その人の変化のタイミングを待てる人であることも幕賓の品格の一つであると思う。